c'est la vie 1
約束の時間、約束の場所。
ローマの石畳を背の高い外人がこちらに向かって歩いてくる。
私の目の前で止まって、身をかがめて顔を覗きこむ。
「君は、、。まゆ?」
本当に来た!
彫りが深く薄茶色の瞳とは対照的に、自然な発音の日本語でそう聞かれた。
「えっ。いや、私は真依です。真弓は母の名前で。もしかして、トマさんですか。」
困ったような顔で英語で「ごめん。あんまり日本語わからないんだ。」と言われる。
私は英語で同じ内容を繰り返す。
「あぁ、そうだよね。まゆにとても似ていたから。驚いたよ。真依か。良い名前だね。」
「ありがとう。あのこれ、母からの手紙です。読んでください。」
私は日本で母から渡された手紙を渡す。
「ありがとう。」
トマさんは受け取った手紙を丁寧に封筒から取り出して手紙を読み始めた。便箋は二枚。あっ、笑った。目尻に皺が沢山はいる。よく笑う人なんだろうな。そんなことを思いながらボーッとトマさんをみていると、手紙を読み終えたらしいトマさんが便箋から目を離して言った。
「少し歩こうか。ここからコロッセウムまで歩いていけるんだ。」
「ok」
初対面の外国人と海外で一緒に過ごすことに不安はあったものの母の知り合いであること、優しそうな人であること、そして、旅先での開放的な気分が私をワクワクさせていた。
石造りの建物の間から綺麗な青空が見えた。