【小説4】
2015年2月 月曜日。
いつもより人の多い地下鉄。
休み前の仕事の積み残しでもあるのか、なぜにこんな。みんな早起き。
子供の頃思い描いていた日常、パステルカラーだったのは、いつの日か。
電車内で今にも顔面に迫り来るギトギトの脂ぎった頭髪。
冬だというのに脂ぎって光るさまに、気持ちの悪さから吐き気をもよおすというより、こんなすし詰めの状況でも、なおも生命力を放つ人体の不思議に冷静になる。というか、ならざるをえない。
いちいちに、反応していては、心が持たないと知ったのはいつからか。
やりすごす。やりすごす。
反応しない。自分の心を、みてみぬふり。
集団に埋没するのが心地よく。
いつの間にか自分が薄まるのも気づかず。
いつのまにか大人。
いつのまにか、今日も、会社の現場に着いた。