hisnd's blog

夢は海辺でぼんやり海を見ながら暮らすこと。

今日から不定期で、小説はじめます。かなり自由にやってます笑。【小説1】

「あかん。人生意外と短いのかもせん。」

8月、金曜の夜の地下鉄御堂筋線の電車内、週刊誌のつり革広告を見上げながら、私はそう思った。

電車内は、今日は華金。明日は休日万歳さながら、夏特有の御堂筋線内の湿り気のある汗臭さを車内に閉じ込めつつ、中年のカップルが抱き合っていたり、明らかに不倫のカップルが見つめ合っていたり、前に座ってる高校生カップルがいきなりキスしたり、前に人が立っていてもおかまいなしで大声で話し合う外国人旅行者と巨大スーツケース、毎度のカオス加減。だけど、今日はそんなことも気にならない。

 

28歳。独身。女。職なし。彼氏なし。大学時代の奨学金の返済額333万円。

 

漫才なら大概にせーよ。とツッコまれてもおかしくない経歴を持ちながら、私は電車内で呆然と立ち尽くしていた。

今まで気づかなかったのがおかしい。

もうすでに、四半世紀近く生きているというのに、時代が時代ならば、そろそろお迎えの準備をしても良いかなという年齢だというのに、私は、まだ何一つ成し遂げていない。私は、最近のもろもろも重なって、そのことに、この夏のじとじととした電車内で気づかされてしまったのだ。

「どうしよう。どうしよう。どうしよう。」

いくら心の中でつぶやいたところで、何も変わらないことはわかってはいるものの、止まらなかった。電車がようやくなんば駅に着き、電車の外に飛び出た。冷蔵庫かと思うくらいに冷房が効きすぎたホーム内の新鮮な空気を必死で吸い込む。私はその時、なんば駅の人の波の中をただただ足早に、歩くことしかできなかった。

 

 【小説2】につづく